日本駅巡り紀行

仙石線

 

[ 仙石線 せんせきせん ] 東日本旅客鉄道

仙石線は東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線で、あおば通〜石巻間49.0kmを結んでいる。仙石線は東北地方のJR線で唯一の直流電化路線であり、東北地方にあって首都圏などで余剰となった通勤型電車が運用される特異な路線である。

仙石線を開業させたのは宮城電気鉄道という民鉄で、同社は亜鉛精錬の衰退で余剰となった電力の消費先として仙台から松島海岸を通り石巻までの高規格電気鉄道を1925年から28年にかけて開業させた。同線は1923年に大阪鉄道(現:近鉄南大阪線)で初めて採用されたばかりの1500V直流電化を採用し仙台駅付近を日本初の地下路線とするなど近代的な路線であった。宮城電気鉄道は1944年に国有化され、国鉄仙石線とされた。

仙石線の転機となったのは2011年の東日本大震災で、この日東松島市内を中心に大きく被災した仙石線は仙台・石巻両側は順次復旧したが被害の大きかった高城町〜陸前小野間は復旧に時間を要した。そして2015年5月30日にようやく全線復旧を果たした際には野蒜・東名の2駅が高台移転し、さらに仙石線高城町駅と東北線塩釜駅を結ぶ(東北線側の分岐点は書類上松島駅)連絡線が開業して仙台〜石巻間の速達ルートは高城町以南で東北線を経由する「仙石東北ライン」に変化した。

仙石線は仙台〜石巻間の都市間輸送(仙石東北ライン)、仙台都市圏の近郊輸送・通勤輸送、塩釜・松島への観光輸送など数多くの役割を担っている。

駅紹介

仙石線はあおば通〜高城町間で東北線に並行しているが、もとが民鉄であったため駅間距離が東北線に比べて明らかに短い。そのため東北線は長距離輸送、仙石線は短距離利用という棲み分けがおおむねできているようである。

駅名 連絡路線、停車種別など 駅の状況 沿線風景
あおば通駅 仙台市営地下鉄乗換 地下駅、地下駅舎 仙台駅西口の地下にあるあおば通を出た仙石線は、仙台トンネル内の仙台、榴ケ岡、宮城野原を通り、半地下の陸前原ノ町を出たところで地上に出る。仙台トンネルは仙台〜陸前原ノ町間の地上線を地下化したもので、かつてはあおば通駅から西公園までの地下鉄東西線に直通する構想もあった。
陸前原ノ町を出ると仙塩街道と交差する高架駅の苦竹に向けて高架橋を上り、その後下って小鶴新田駅に至る。次の福田町との間には車庫があり区間列車も運転される。陸前高砂、中野栄を過ぎると再び高架橋となり、折り返し列車も設定される多賀城駅に至る。次の下馬駅を過ぎると塩釜市内に入り、塩釜港線廃線跡と並行して西塩釜駅を通り、塩釜市中心部に近い高架駅の本塩釜を経て運行上の主要駅である東塩釜に至る。
仙台駅 東北新幹線、JR東北線、JR仙山線乗換 地下駅、地下駅舎
榴ケ岡駅   地下駅、地下駅舎
宮城野原駅   地下駅、地下駅舎
陸前原ノ町駅   地下駅、地上駅舎
苦竹駅   高架駅、高架下駅舎
小鶴新田駅   地上駅、橋上駅舎
福田町駅   地上駅、橋上駅舎
陸前高砂駅   地上駅、地上駅舎
中野栄駅   地上駅、橋上駅舎
多賀城駅   高架駅、高架下駅舎
下馬駅   地上駅、地上駅舎
西塩釜駅   地上駅、橋上駅舎
本塩釜駅   高架駅、高架下駅舎
東塩釜駅   高架駅、地上駅舎
陸前浜田駅   地上駅、駅舎なし 東塩釜を出ると路線は単線となり、利府町の陸前浜田を経て松島海岸に至る。この区間は松島丘陵を越える山岳区間で、海と山の間のわずかな土地を東北線に寄り添いながら抜ける。
松島海岸駅   高架駅、地上駅舎
高城町駅 JR東北線支線(仙石東北ライン)
特別快速、快速停車駅
地上駅、地上駅舎
手樽駅   地上駅、駅舎なし 高城町は小駅ながら運行上の要衝で、東北線支線と合流する。ここから先は今まで仙石線と付きつ離れつだった東北線と別れ、松島湾沿いに手樽、陸前富山、陸前大塚と進む。松島湾の北の野蒜地区は津波被害が大きかったため街ごと高台移転した区間で、東名と野蒜は新しい台地上に設けられた駅である。高台区間を出て陸前小野で地上に降りると石巻平野の区間に入り、鹿妻を経て東松島市中心駅の矢本に至る。特別快速は仙石線内では高城町と矢本のみ途中停車する。矢本からは石巻都市圏の住宅地で、東矢本、陸前赤井を経て石巻市内に入る。筆者探訪時には未開業だった石巻あゆみ野を過ぎ、蛇田を経て陸前山下に至る。陸前山下で貨物線と合流すると続いて石巻線と合流し、終点の石巻に至る。石巻はかつて宮電の建設した独立した駅で、現在でも私鉄のような頭端ホームの終点駅である。
陸前富山駅   地上駅、駅舎なし
陸前大塚駅   地上駅、駅舎なし
東名駅   地上駅、駅舎なし
野蒜駅 快速停車駅 地上駅、地上駅舎
陸前小野駅 快速停車駅 地上駅、地上駅舎
鹿妻駅   地上駅、駅舎なし
矢本駅 特別快速、快速停車駅 地上駅、地上駅舎
東矢本駅   地上駅、駅舎なし
陸前赤井駅 快速停車駅 地上駅、地上駅舎
石巻あゆみ野駅 一部快速停車駅 地上駅、駅舎なし
蛇田駅 快速停車駅 地上駅、地上駅舎
陸前山下駅 快速停車駅 地上駅、地上駅舎
石巻駅 JR石巻線乗換
特別快速、快速停車駅
地上駅、地上駅舎

車両

205系3100番台
HB-E210系
103系(撤退)


205系は現在の仙石線の主力車両で、全線にわたって普通列車として運転されている。仙石線で使用している3100番台は山手線などで発生した余剰中間車を先頭車化改造して誕生した4両編成。
HB-E210系は仙石東北ラインの車両。運転区間の大半は電化区間であるが、交流の東北線と直流の仙石線を直通するためハイブリッド気動車とされた。2両編成だが、ほとんどの運用は2編成を併結した4両編成。
103系はかつての仙石線の主力車両で、山手線などからの転属車両を運転していた。2004年に一旦撤退したが、2007年から2009年にかけて1編成のみ復活していた。ここで取り上げるのはその1編成。

運行

仙石線の列車は主に仙石線系統と仙石東北ラインの2つに分けることができ、前者は沿線の近郊輸送を、後者は石巻との都市間輸送と石巻方での近郊輸送をそれぞれになっている。

・仙石東北ライン
仙石東北ラインは東北線川内〜塩釜〜高城町間と仙石線高城町〜石巻間で運転している。途中の塩釜〜高城町間では2015年に新設された東北線と仙石線の連絡線を通過する。全ての列車種別が「快速(または特別快速)」であり全ての列車が仙石線内で、半数ほどの列車はさらに東北線内でも速達運転を行っている。そのため、大半の時間で仙石線経由の仙台〜石巻間直通列車に乗るよりも仙石東北ラインに乗るほうが終点まで早く付くようになっている。
運転頻度は昼間時におおむね1時間に1本で、HB-E210系4両編成(1往復のみ2両編成)で運転される。仙台〜石巻間再速達列車である特別快速は1日1往復のみの運転。

・仙石線
純粋に仙石線のみを走る列車は全て各駅停車の普通列車で運転される。全ての列車があおば通駅発着で、石巻方の発着駅としては小鶴新田、多賀城、東塩釜、高城町、石巻の各駅が設定されている。
昼間時の運転頻度はおおむね1時間に4本で、石巻・高城町・東塩釜・多賀城の発着列車が各1本ずつ運転されている。高城町発着の列車は仙石東北ラインとの接続も考慮されている。また、ラッシュ時には仙台〜小鶴新田間において6分間隔前後で運転される時間帯もある。

・仙石東北ライン開業までの運行
仙石東北ラインが開業するまでは仙石線あおば通発着の快速列車も運転されていた。停車駅は仙台・多賀城・本塩釜・東塩釜・松島海岸・高城町・野蒜・陸前小野・矢本〜石巻間各駅で、仙台〜矢本間で快速運転を行う速達タイプ(赤快速またはA快速)と多賀城〜矢本間で快速運転を行う準速達タイプ(緑快速またはB快速)の2種類が設定されていた。
運転本数は現状とそこまで変わらなかったが、仙石線内に退避設備がない(ただし東塩釜と多賀城で構造的には緩急接続が可能)関係で快速の前後では運転間隔が不均一化していた。仙石東北ラインの開業は松島海岸・東塩釜・本塩釜・多賀城の各駅利用客にとっては速達サービスダウンとなったが全体としては運転間隔の均等化という大きな功績をあおば通〜高城町間にも与えたといえる。
なお、震災後2015年5月までは陸前小野〜石巻間が孤立していたため一時的に同区間の電化設備を使用停止してキハ110系によって普通列車のみの運転を行っていた。

・路線のデータ
開業日 仙台〜西塩釜間:1925(T14)年6月25日/西塩釜〜本塩釜間:1926(T15)年4月14日/本塩釜〜松島海岸間:1927(S2)年 4月18日/松島海岸〜陸前小野間:1928(S3)年4月10日/陸前小野〜石巻間:1928(S3)年11月22日 以上、すべて宮城電気鉄道による開業区間
あおば通〜陸前原ノ町間:2000(H12)年3月11日に仙台〜陸前原ノ町間を地下化・延伸/陸前大塚〜陸前小野間:2015(H27)年5月30日に路線付替
路線長:49.0km
単線/複線 あおば通〜東塩釜間:複線/東塩釜〜石巻間:単線

・ページのデータ
公開:2015年11月17日
更新:2016年12月24日(沿線風景を追加)

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