日本駅巡り紀行

公開:2011年6月11日
更新:2012年1月21日

JR阪和線

 

[ 阪和線 ] 西日本旅客鉄道

 阪和線は西日本旅客鉄道(以下JR西日本またはJR)の保有する鉄道路線で、路線の長さは天王寺〜和歌山間と鳳〜東羽衣間の計63.0kmです。アーバンネットワーク(大阪近郊の路線網についてJR西日本が付けた愛称)を構成する路線の1つで、ラインカラー(支線除く)はオレンジ色です。

 もともと阪和線は阪和電気鉄道という私鉄が建設した路線でした。この会社は京阪電鉄と関係の深い会社でしたが、将来の国による買収に応じることなどを阪和線建設の条件とされたため、軌道の幅は高速運転向きといわれ京阪も採用していた標準軌(1435mm)ではなく国鉄に合わせた狭軌(1067mm)になりました。しかし、内陸に直線状の路線を敷くことで高速運転を可能にし、天王寺〜和歌山間ノンストップの「超特急」は狭軌鉄道での表定速度の記録を作るほどでした。当時和歌山〜大阪間には南海が走っていて、両社はしばらくしのぎを削りあいました。
 しかし、阪和間の需要はもともと阪神間、京阪間に比べると少なく、その上に阪和電鉄は内陸の人家が少ない地帯を通っていたため経営は不安定でした。その上、阪和電鉄の粉飾決算疑惑などで京阪が出資をやめ、さらに経営は不安定化。戦時下での過度な競争を好ましく思わなかった政府や、このころ開業した紀勢線のダイヤ作りを簡略化したいと考えていた鉄道省の意向が働いたことで、1940年に阪和電鉄はとうとう競合相手であった南海に買収され、旧阪和電鉄の路線は南海山手線となりました(南海本線より内陸を走っているため)。しかし、そのころから国としては阪和線買収の意思があり、南海山手線となって僅か4年後の1944年には国に買収されてしまい、国鉄阪和線となりました。

 時は下りJRの路線となりましたが、直線に敷かれた線路や信号の多さ、線路が直線で高速運転向きといわれる相対式ホームの積極的な採用など、まだまだ阪和電気鉄道の雰囲気は残っています。また、木造駅舎や木造の跨線橋などもたくさん残っていていい雰囲気です。

目次

 

運行

 阪和線には現在「普通」「区間快速」「B快速」「快速」「直通快速」「紀州路快速」「関空快速」の各種別が運転されています。昼間は基本的には15ごとに同じダイヤを繰り返すパターンダイヤになっていて、全区間にわたり、各駅に停まる列車は15分間隔で運転されるようになっています。

 「普通」は各駅に停車する列車ですが、途中駅から各駅に停まるタイプの快速に重点が置かれるダイヤ構成になったため大きく本数が減らされ、昼間時間帯には天王寺〜鳳間の区間列車と羽衣線内の往復列車がともに15分間隔で運転されるのみになっています。

 「区間快速」は鳳から先の各駅に停車する列車で、昼間には鳳〜日根野間の各駅停車の代わりとして天王寺〜日根野間で15分に1本が運転されています。

 「紀州路快速」は全区間に渡り快速運転をする列車で、大阪環状線に直通して環状線内でも快速運転をします。全ての時間帯にわたって運転され、昼間でも天王寺・京橋〜(環状線)〜天王寺〜和歌山間で15分に1本運転されています。ただし、日根野〜和歌山間を通過運転するのは朝を中心とした一部時間帯のみで、昼間に運転される列車は日根野〜和歌山間で各駅停車になります。

 「快速」「直通快速」はともに全区間で快速運転をする列車で、昼間には運転されません。両者の違いは大阪環状線内での停車駅で、各駅に停車するものは直通快速、通過運転をするものは快速で、快速は基本的に紀州路快速と同じ停車駅です。また、「B快速」は日根野〜和歌山間で各駅に停車する快速で、昼間の紀州路快速と同じ停車駅です。

 「関空快速」は関西空港線に直通する列車で、ほとんどの列車は大阪環状線〜日根野間は紀州路快速と連結して運転し、日根野駅で切り離して関西空港線に直通します。

天王寺〜鳳間

 天王寺から鳳までは今でも103系や205系が幅を利かせる区間で、阪和線で最も列車の本数が多い区間です。天王寺駅をスルーする列車が増え、美章園〜杉本町間は新しい高架区間となっていますが、現在でも線路配置や運行形態などに私鉄らしさが残っています。

 各駅停車以外のすべての列車が通過運転するため、通過列車の方が圧倒的に多い区間です。鶴ヶ丘、杉本町、上野芝、鳳が追い越し可能駅で、鳳では昼間のすべての各駅停車が折り返すほか、他の駅でも普通列車は頻繁に追い越し待ち(通過追い越し)を行います。

駅名 乗り換え路線・停車列車 駅構造 沿線風景
天王寺駅

大阪環状線、関西線(大和路線)接続
近鉄線(大阪阿部野橋駅)乗換
快速停車駅※

地上駅(大阪環状線などは掘割)・地上駅舎  ターミナル型の天王寺駅を出ると美章園駅までが開業時からの高架区間、杉本町駅手前までが21世紀になってからの高架区間です。
 新しい高架区間でも駅によってテーマカラーが設定されていて、没個性的にはなっていません。
美章園駅   高架駅・地上駅舎
南田辺駅 市営地下鉄御堂筋線乗換 高架駅・高架下駅舎
鶴ヶ丘駅   高架駅・高架下駅舎
長居駅   高架駅・高架下駅舎
我孫子町駅   地上駅・高架下駅舎
杉本町駅   地上駅・地上駅舎  杉本町駅は構内に私鉄らしさの漂う追い越し可能駅で、大阪市内最後の駅。古い駅舎の残る浅香駅からは堺市内に入ります。
 堺市駅はいまどきの新しい橋上駅舎で、上野芝駅も1980年代に造られた橋上駅舎ですが、三国ケ丘や百舌鳥など古い駅舎が残っている駅もあります。
 鳳駅は羽衣線も分岐する主要駅です。
浅香駅   高架駅・地上駅舎
堺市駅 快速停車駅※ 地上駅・橋上駅舎
三国ヶ丘駅 南海高野線乗換
快速停車駅※
掘割駅・地上駅舎
百舌鳥駅   地上駅・地上駅舎
上野芝駅   地上駅・橋上駅舎
津久野駅   盛土駅・地上駅舎
鳳駅 羽衣線乗換
快速停車駅※
地上駅・橋上駅舎
※区間快速以上のすべての快速が停車

鳳〜日根野間

 鳳を出ると阪和線の列車の本数も減り、鳳〜日根野間では昼間には区間快速が各駅停車の代わりになります。ローカル色が出てくる区間ですが、同じような雰囲気のところを走る他のJR線と比べると格段に駅数が多く、駅の雰囲気なども含めて阪和線が私鉄だったことが実感できる区間です。

駅名 乗り換え路線・停車列車 駅構造 沿線風景
鳳駅 羽衣線乗換
快速停車駅※
地上駅・橋上駅舎  徐々に沿線に田んぼなどが増えてきて、ローカル色が出てきます。
 相対式ホームでホームに直接駅舎が付いている、という私鉄に多い線路配置の駅が多いですが、下松駅は橋上化されています。
富木駅   地上駅・地上駅舎
北信太駅   地上駅・地上駅舎
信太山駅   地上駅・地上駅舎
和泉府中駅 快速停車駅※ 地上駅・地上駅舎
久米田駅   地上駅・地上駅舎
下松駅   地上駅・橋上駅舎
東岸和田駅 快速停車駅※ 地上駅・地上駅舎  東岸和田、和泉橋本、東佐野の各駅は木造の駅舎で、昔の雰囲気がよく残っています。
 しかし東岸和田駅では高架化が進行中で、熊取駅と日根野駅はすでに橋上駅舎化されています。
東貝塚駅   地上駅・地上駅舎
和泉橋本駅   地上駅・地上駅舎
東佐野駅   地上駅・地上駅舎
熊取駅 快速停車駅※ 地上駅・橋上駅舎
日根野駅 関西空港線接続(乗入)
快速停車駅※
地上駅・橋上駅舎
関西空港線直通 ※関空快速・特急のみ
※B快速以上のすべての快速が停車、区間快速は各駅停車

日根野〜和歌山

 この区間は大阪府と和歌山県の県境にある山越え区間で、駅や駅周辺の雰囲気がとても良い区間です。ただし昼間は223系などで運転される紀州路快速しか走らなくなり、ローカルな雰囲気ながらも「アーバンネットワーク」の一部であることを実感します。

駅名 乗り換え路線・停車列車 駅構造 沿線風景
日根野駅 関西空港線乗換
快速停車駅※
地上駅・橋上駅舎

 阪和線の中でももっともローカル色の深い区間で、沿線の建物も低層の建物ばかりになります。運転本数も少なく、昼間には15分に1本の紀州路快速しか各駅に停車する列車はありません。

 特に山中渓駅周辺が最も特徴的な区間で、県境の山の中に駅があるという良い雰囲気です。

長滝駅   地上駅・地上駅舎
新家駅   地上駅・地上駅舎
和泉砂川駅 快速停車駅※ 地上駅・地上駅舎
和泉鳥取駅   盛土駅・地上駅舎
山中渓駅   地上駅・地上駅舎
紀伊駅 快速停車駅※ 地上駅・地上駅舎
六十谷駅 快速停車駅※ 地上駅・地上駅舎
紀伊中ノ島駅   盛土駅・地上駅舎
和歌山駅 紀勢線(きのくに線)接続(乗入)
和歌山線接続、和歌山電鐵乗換
快速停車駅※
地上駅・地上駅舎
※快速・直通快速以上のすべての快速が停車。紀州路快速の通過運転は一部時間帯のみで、昼間の紀州路快速は各駅に停車。

羽衣線(通称) 鳳〜東羽衣間

 阪和線には大阪〜和歌山間のほかに鳳〜東羽衣間を結ぶ支線があり、羽衣線、東羽衣線といった通称で呼ばれています(このページでは羽衣線という呼び方に統一します)。阪和線と南海線をつなぐ役割を担っている路線ですが、阪和線との直通列車はない上に路線図上では阪和線と別のラインカラーで描かれていて、まるで阪和線とは別の路線のようです。

 羽衣線はもともとは浜寺にあった海水浴場への利用を当て込んで開業した路線で、開業時には東羽衣駅は阪和浜寺駅という名前でした。南海に対抗して海水浴シーズンには天王寺までノンストップの列車を設定していたほどでしたが、その南海に買収された際には山手羽衣駅、国有化された際には東羽衣駅という風に次々と改称されてしまいました。

 3両編成の103系が15分間隔で往復する単線の通勤路線で、現在の姿からは浜寺海岸への行楽路線だった過去は感じられません。

駅名 乗り換え路線 駅構造 沿線風景
鳳駅 阪和線(本線)乗換 地上駅・橋上駅舎  全長1.7kmは日本で最も短い運転距離の列車の一つで、あっという間に列車は終点に着きます。
東羽衣駅 南海線(羽衣駅)乗換 高架駅・高架下駅舎

車両

103系 205系1000番台
 103系は現在でも現役で活躍し続けている国鉄形の形式です。基本的にスカイブルー(水色)に塗られていますが、他路線との車両のやり繰りが多いため大阪環状線のオレンジ色や奈良線のウグイス(黄緑)色に塗られた編成もあり、バリエーションが豊かです。4両と6両があり、ほとんどは各駅停車、それも昼間は天王寺〜鳳間限定で使用されます。  205系は国鉄が開発した形式ですが、この1000番台はJR西日本が製造した車両で阪和線にのみ投入されました。国鉄が製造したものとは、前面の窓配置などに違いがあります。4両編成5本しかなく、103系の4両編成と共通で使用されます。

223系0番台 223系2500番台 225系5000番台
 223系は関空快速向けに1993年からJR西日本が製造を開始した近郊型の形式で、その後はJR西日本の標準タイプの形式として2008年まで15年にわたって製造されました。この0番台はその中でも最も古いタイプで、1000番台(東海道線新快速向け)以降は使用されなかった丸い前照灯が特徴です。  2500番台は0番台の不足を補うために製造されたタイプで、1000番台(東海道・山陽線用)以降の標準的なデザインを踏襲しています。阪和線・関西空港線の223系は数回にわたって編成を組み替えているため、、2500番台の中でも製造時期で差があり、0番台と混合した編成も存在しています。  225系は223系の次世代形式としてJR西日本が開発した近郊型電車で、そのうち5000番台は阪和線用です。座席の配置や青のグラデーションを用いた塗装などは223系に準じていますが、外観や内装の部品などは大きく変更され、イメージを一新しました。

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