日本駅巡り紀行

公開:2011年7月25日
更新:2011年12月18日

東京都電

 

[ 東京都交通局 とうきょうとこうつうきょく ] 荒川電車営業所:東京都荒川区

 東京都交通局は東京都内の交通機関などを運営する地方公営企業です。明治44年に東京市電気局として発電・市電事業を始めたのが始まりで、現在では都営地下鉄・都電・都バス・日暮里舎人ライナーの4つの都内の交通機関と、多摩川を利用した発電事業・上野動物園内でのモノレール事業を行っています。

 そのうち都電事業は、道路交通の肥大化によって定時運行が困難になったことから都の財政再建の手段として全廃する計画が作られましたが、他の区間が1960年代から相次いで廃止されていく中、現在荒川線となっている区間のみが1972年以後も残りました。その後、1974年に残った区間には「荒川線」の愛称が与えられるとともに、恒久的に残していくことが決定され、現在に至ります。

都電のあらまし

 東京都電の特徴はほとんどの路線が私鉄からの買収路線であったことで、「東京電車鉄道(通称:電鉄、以下同じ)」、「東京市街鉄道(街鉄)」、「東京電気鉄道(外堀線)」、「王子電気鉄道(王電)」、「城東電気軌道[のちに東京地下鉄道が買収]」、「西武軌道[のちに東京地下鉄道が買収]」などの私鉄が建設した路線が都電(戦中までは市電)の路線の大半を占めていました。

 都電(市電)は東京という大都市に所在していたため利用客数はとても多く、最盛期には61もの系統が運行されていました。しかし、高度経済成長期に道路交通が急増したため交通局の経営が悪化し、都の財政再建のために1960年代半ばから70年代初頭にかけて路線をすべて撤去し、地下鉄やバスに転換する計画が立てられました。

 しかし、当時27系統・32系統として運行されていた旧王電区間の大半は、新設軌道が多かったため道路混雑による遅れが少なく、代替バスの運転も困難だったため1972年の第6次都電撤去でも廃止が見送られ、1974年に「荒川線」として存続することになりました。

荒川線

 都電荒川線は東京都電の中で唯一残った区間です。この路線を建設したのは王子電気軌道という会社で、三ノ輪橋〜王子〜早稲田間と王子〜赤羽(現在の赤羽岩淵駅付近)の路線を建設しました。その後同社の路線は東京市(のちの東京都)により買収され東京市電(のちの都電)の一部となり、1960年代には他の都電とともに廃止されることになりました。しかし王子〜赤羽間以外の区間には新設軌道区間が多かったため都電唯一の路線として存続することになり、1974年からは「荒川線」という路線名が与えられて唯一の東京都電となっています。

 この路線は路面電車といいつつ、併用軌道と呼ばれる道路の上を通る区間は王子駅前〜飛鳥山間の駅間などにわずかにあるだけで、大半の区間は新設軌道と呼ばれる道路とは独立した区間です。そのため、他の路面電車で行われているような低床車の導入などは行わず、電停のホームを嵩上げすることでバリアフリー化をしています。

駅名 乗換路線など 駅の状況※ 沿線風景
三ノ輪橋駅   新設軌道区間

 三ノ輪橋駅は王子電気軌道時代からの駅ビルが残る起点駅で、2007年にはレトロな雰囲気にリニューアルされています。

 三ノ輪橋を出ると路線はしばらく下町の中を走り、その雰囲気は路面電車というよりも地方の私鉄のような雰囲気です。

荒川一中前駅   新設軌道区間
荒川区役所前駅   新設軌道区間
荒川二丁目駅   新設軌道区間
荒川七丁目駅   新設軌道区間
町屋駅前駅 京成本線・地下鉄千代田線(町屋駅)連絡 新設軌道区間
町屋二丁目駅   新設軌道区間
東尾久三丁目駅   道路中央
熊野前駅 日暮里・舎人ライナー連絡 道路中央

 熊野前駅で日暮里舎人ライナーと交差すると、都電では珍しい併用軌道区間に入ります。しかし、この区間は線路式と車道を柵で分ける「センターリザベーション区間」になっているので、車との事故などを心配することはありません。

 荒川車庫前駅は都電の中心のような駅で、昔走っていた車両も保存されています。

宮ノ前駅   道路中央
小台駅   新設軌道区間
/道路中央
荒川遊園地前駅 荒川遊園地最寄駅 新設軌道区間
荒川車庫前駅 荒川車庫、電車営業所最寄駅 新設軌道区間
梶原駅   新設軌道区間
栄町駅   新設軌道区間
王子駅前駅 JR東北線、地下鉄南北線(王子駅)連絡 新設軌道区間

 王子駅前駅と飛鳥山駅の間は東京では唯一、関東でもここと江ノ電にしかない完全な併用軌道区間で、車とともに走る路面電車の様子が見られます。

 庚申塚駅は「おばあちゃんの原宿」こと巣鴨地蔵通り商店街の最寄り駅で、レトロな雰囲気に改装されています。

飛鳥山駅   新設軌道区間
滝野川一丁目駅   新設軌道区間
西ヶ原四丁目駅   新設軌道区間
新庚申塚駅 地下鉄三田線(西巣鴨駅)連絡 新設軌道区間
庚申塚駅 地蔵通り商店街最寄駅 新設軌道区間
巣鴨新田駅   新設軌道区間
大塚駅前駅 JR山手線(大塚駅)連絡 新設軌道区間

 大塚駅前駅は都電でも有数の利用客が多い駅で、この大塚〜早稲田間が最も都会らしい場所を走る区間です。

 鬼子母神や学習院下などを抜けると終点の早稲田に至りますが、早稲田駅はあまり他の交通機関との連絡が良くないところにあり、東西線の早稲田駅までは約10分ほどかかります。

向原駅   新設軌道区間
東池袋四丁目駅 東京メトロ有楽町線(東池袋駅)連絡
サンシャイン60最寄駅
新設軌道区間
都電雑司ヶ谷駅   新設軌道区間
鬼子母神前駅 東京メトロ副都心線(雑司ヶ谷駅)連絡 新設軌道区間
学習院下駅   新設軌道区間
面影橋駅   道路中央
早稲田駅   道路中央
※センターリザベーションなどの併用軌道区間にある駅、および線路の両側にある道がともに一方通行で一体化した道として利用されている区間にある駅を「道路中央」、そうでない駅を「新設軌道区間」としました。

車両

 都電荒川線には現在4形式の車両が在籍していて、すべて荒川電車営業所に所属しています。路面電車の車両ながらも床面高さ80cm程度の高床車を使用しているのが特徴で、各駅に設けられたスロープによってバリアフリー化しています。

7000形 8500形 9000形
 都電が荒川線のみになる前から活躍している形式ですが、荒川線が成立したころに車体を載せ替えられ、現在の姿になりました。荒川線最古参の形式です。  1990年、1962年の7500形以来の新型車両として落成した形式です。数々の新機軸を取り込んだ形式で、イベント用を除く全形式を置き換える予定でしたが、5編成の増備にとどまりました。  東京市電時代をイメージしたイベント車両で、実は8500系とほぼ同様の寸法で作られています。2007年に登場し、2008年には2本に増備されました。イベント車両ながらもほかの車両と共通して運転されています。

8800形 7500形(廃車済み)
 老朽化した7500形を置き換えるために登場した形式で、2009年から2011年にかけて10両が導入され、7500形すべてを置き換えました。それまでの荒川線車両のイメージを塗り替えるデザインとなり、車両のカラーは4色あります。  1962年に登場した形式で、荒川線が成立した時点では最も新しい形式でした。7000形よりも新しい形式でしたが、荒川線の成立時に車体の載せ替えは行わなかったため老朽化が進み、2011年までに8800形に置き換えられました。

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