E217系はJR東日本の近郊型車両で、横須賀・総武快速線及び直通する房総各線で運用されている。JR東日本が開発した209系をもとに開発された形式で、近郊型車両として初めて(E231系以降の「一般型車両」を除くと唯一)の4扉車となった。1994年から113形を置き換えるため横須賀線・総武快速線用に投入され、1999年〜2020年の間は同系統の快速列車は全て本形式のみで運転された。2020年12月からはE235系による置き換えが開始され、今後全ての車両が置き換えられる予定である(2022年現在)。
結果的に他路線向けには新製投入されなかったが、通勤型と近郊型で基本設計を区別しない設計思想、幅広ステンレス車体、4扉セミクロスシートの座席配置、先頭部のクラッシャブルゾーンなどの様々な要素はE231系以降の一般型電車(特に近郊タイプ)に引き継がれ、JR東日本にとってエポックメイキングな車両の一つとなった。
車体はステンレス製で、近郊型ながらも20m・4扉車。209系をベースとしているが、裾絞りのある幅広車体となった。11両の基本編成と4両の付属編成があり、11両編成にはグリーン車が2両連結されている。基本的には11両または15両で運転されるが、久里浜〜逗子間および佐倉〜鹿島神宮・成東間では4両単独での運転もある。
先頭部は丸みを帯びた本形式だけのデザインで、中央に貫通扉がある(終盤の増備車はデザインを変えずに非貫通化されている)。腰板部と幕板部には青とクリーム色の「スカ色」の帯を巻いている。普通車の内装は209系に続いて青・グレー系の配色で、座席配置は基本編成9〜11号車がセミクロスシート、その他がロングシート。グリーン車は211系グリーン車をベースにした2階建てで、基本編成4・5号車に連結される。
Y-19編成 千葉方より 下総中山にて
基本編成11両単独での姿。丸みを帯びた先頭デザインは本形式の特徴で、1994年のグッドデザイン賞も受賞した。先頭部には行先表示器がなく、向かって右の窓には「横須賀線-総武線」(横と総が大文字)と表示されている。
Y-29編成 千葉方より(後方) 下総中山にて
前照灯・尾灯の位置が特徴的で、前照灯は貫通路の上に集約され、尾灯はスカートの中に収められている。
★更新前の姿 Y-4編成 千葉方より 品川にて
E217系では、投入13年(機器類のメンテナンスフリー期間)が経過した2007年から2012年にかけて全編成の更新工事が行われた。
主に機器面の改修だったが、外観の面でも、
・スカ色の色味の変更、先頭部の塗り分けの変更
・E217系専用ロゴの撤去
が行われた。また、それとは別に2009〜10年に全編成でスカートの交換も行われている。スカートの形状・塗装は交換前のほうが車体との一体感がある。
貫通路部分踏み板(1枚目:2〜6次車、2枚目:7・8次車)
E217系は東京トンネル・総武トンネル内での火災対策として前面貫通型として設計されたが、地下トンネルを走る車両の安全基準が増備中に変更されたため途中から非貫通に設計変更された。
後期型の7・8次車に付いているのは貫通路はダミーであり、その証拠に踏み板のドアレールがない。なお、量産先行車では踏み板の形状が異なる(最後の写真参照)。
行先表示器
側面の行先表示器は投入当初は幕式だったが、現在では全て3色LEDとなっている。
ロングシート車内装
E217系は「近郊型」を名乗っているが、ほとんどの車両は通勤型と変わらない4扉ロングシートの内装とされた。内装は209系をベースにしている。
車端部
車端部の一部(トイレ設置車では扉間の一部)は優先席とされている。なお、車端部に肘掛け用のくぼみがあるのは川崎重工製の特徴で、東急車輛製・JR東日本製の車両にはこのくぼみはない。
ロングシート
内装は床面がグレー系、化粧板が白系、座席が青系となっている。モケットのストライプ柄は本形式の特徴。座り心地は209系と同じく硬い。
セミクロスシート車内装
基本編成の千葉方3両は各車6ヶ所のボックスシートを配置したセミクロスシートで、座席定員を増やしている。
セミクロスシート
片持ちクロスシートをロングシートでサンドイッチした座席配置はE231系近郊タイプ以降の各車両にも引き継がれた。シートピッチが限界まで詰められているため、乗車率が高いときはむしろロングシートよりも居住性が低く感じる。
セミクロスシート(量産先行車)
量産先行車のセミクロスシート部は量産車やE231系以降とは形状が異なっており、荷棚と手すりの間にスタンションポールが設けられているのが特徴。
セミクロスシート(量産先行車)
量産先行車のセミクロスシートは量産車と異なり通路側に脚がある。
☆車椅子対応トイレ
増1・1・11号車にはトイレが設置されている。このうち1号車のトイレは大型の車椅子対応トイレ。
☆和式トイレ
増1号車・11号車に設置されているトイレは小型の和式トイレ。当初の編成は3両とも和式トイレだったが、編成組み換えにより現在のトイレ配置に統一された。
側扉
側扉の上にはLED式の車内案内表示器が設置されている。
☆ドアカットステッカー
横須賀線の田浦駅ではドアカットを行うため、基本編成1・2・10・11号車の一部ドアにはその旨を記載したステッカーが貼られている。
☆先頭部
先頭部には踏切事故に備えた「クラッシャブルゾーン」が設置され、運転室が拡大された。これにともなって先頭車のドア配置が変更され、運転室背後にはデッドスペースが生まれている。中央に乗務員室扉があるのは本形式の特徴だが、運転室の形態はE231系近郊タイプ以降に受け継がれている。
運転室(前面貫通車)
運転台は高運転台。この車両は貫通扉が設置されているが、機器配置は非貫通車でも変わらない。
グリーン車 1枚目:4号車(サロE216形)、2枚目:5号車(サロE217形)
中間に2両のグリーン車が連結されている。211系のグリーン車を基本とした設計となっており、E231系以降でもグリーン車の外観はほとんど変わっていない。
扉間が2階建て、車端部が平屋で、グリーン車同士の連結面側の平屋部には車掌室(4号車)や洋式トイレ(5号車)が設置されている。
2階席 車内
車体限界をギリギリまで客室に使用しているため、天井も窓も丸まっている。車端部にはLED式車内案内表示器を設置している。
2階席 座席
座席は片側2列の回転式リクライニングシートで、背面にテーブルが付いている。座席だけで言えば特急の普通車と比べて遜色がない。
ちなみに、廊下側に脚のない片持ち式座席が採用されたが、これは他形式に引き継がれなかった。
テーブルとカーテン
車端部のテーブル
車端部には背面テーブルがない関係で固定のテーブルが設置されている。小さい上に台形なのは回転機構に干渉しないため。
座席部の天井
天井には読書灯とSuicaリーダーが設置されている。グリーン車Suicaシステムは本形式においては後付けだ。
1階席 車内
1階席も天井の高さはあまり変わらないが、側面が直線的なだけ空間は広い。景色は楽しめないが快適性は1階席のほうが高いかもしれない。
1階席 通路床面
1階席は通路部の床面を限界まで下げているため、通路と座席の間に小さな段差がある。
平屋席
車端部の平屋席はそれぞれ2〜3列(定員8〜12人)で、大きめのコンパートメントのような空間となっている。天井が高く、グリーン車で唯一荷棚が設置されている。
1階席・平屋席 座席
2階席の座席が青系のモケットなのに対し、1階席・平屋席のモケットはピンク系が使用されている。
デッキ部・側扉
グリーン車の側扉は片開きで、デッキは最小限のスペース。デッキの両端からは2階席・1階席へ螺旋階段が伸びている。平屋席を除いてデッキとの間に扉はない。
E217系は横須賀線・総武快速線のイメージが強いが、当初は東海道線などの他の近郊区間の旧型車両の置き換えにも用いられる構想だったと言われる。結果的に東海道線にはE231系近郊タイプが投入されたが、E217系も一部編成が東海道線に転属していた時期がある。
2001年3月のダイヤ改正から運転開始した湘南新宿ラインには、新宿〜横須賀線の系統にE217系が投入された。しかし、2004年10月のダイヤ改正で湘南新宿ラインはE231系に統一されたため、E217系の運用に余裕が出た。そのため、3編成を国府津車両センターに転属させて東海道線の113系を置き換えることとなり、2006年3月のダイヤ改正から東海道線での運用を開始した。国府津車両センター所属車両は帯色が湘南色に変更され、また編成組み換えで10両+5両の15両編成とされていた。途中で編成数の増減はあったが、2015年3月のダイヤ改正まで東海道線での運行は続けられた(いずれの編成も鎌倉車両センターに再転属して横須賀・総武快速線に復帰)。
★F-01編成(基本)+F-51編成(付属) 東京方より 品川にて ※更新前
東海道線時代は湘南色で、先頭の表示器には「普通」(下り)、「東海道線」(上り)、「快速アクティー」と表示されていた。
編成は10+5に組み替えられ、さらに付属編成と基本編成の位置関係も入れ替えられている。
なお、F-01編成は量産先行車で、貫通路部分の踏み板がないのが特徴的である(本記事の上の方で紹介した2タイプのどちらとも異なる)。
・形式のデータ
沿革 1994/12/03:量産先行車運行開始|1994〜1998年度:増備|2001/12/05〜2004/10/15:湘南新宿ラインで運用|2006/03/18〜2015/03/13:東海道線で運用|2020/12/21:E235系1000番台が運転開始。E217系を順次置き換える
車両数 鎌倉車両センター(横クラ):11両51編成・4両46編成(最多時)
・ページのデータ
取材:★2009/02/02・☆2010/04/03・2020/07/26・2021/05/02・2021/11/14・2021/10/23・2021/12/29・2022/04/29
公開:2022/02/17
更新:2022/05/01(量産先行車車内写真を追加)
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